大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)1853号 判決
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〔判決理由〕三、損害
(一)、原告の傷害の内容、治療および期間、後遺症
<証拠>を総合すると、左の事実が認められる。
1、傷害の内容
原告は本件事故により、頭部、頸部、背部打撲傷等(大後頭部三叉神経症候群、脳血管障害)の傷害を受けたこと。
2、治療および期間
右傷害のため、昭和四三年一月一二日より昭和四五年一月二一日まで井上外科病院に入院して安静、頸部の牽引、神経ブロック等の治療を受けながら、その間昭和四三年五月八日から同月二五日まで(実通院治療日数四日)和歌山医大病院に、同じく昭和四三年七月一日から同月五日まで和歌山労災病院に、同じく昭和四三年九月一三日京大病院に各通院して治療を受け、右井上外科病院を退院後、昭和四五年一月二二日から同年二月一二日まで阪大病院に入院して治療を受け、同病院を退院後昭和四五年二月一二日から昭和四六年七月末日までの間右井上外科病院に昭和四五年八月一〇日藤田胃腸科病院に各通院して治療を受けたこと、
3、後遺症
右の治療によつても原告の右症状は全快せず、少くとも昭和四五年一月ごろには頭痛、頸痛、めまい、左手のしびれ感等の後遺症を残して固定したこと。
以上が認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。<中略>
2、逸失利益
二、二〇五、〇〇〇円
(1) 職業
イ、農業について、
<証拠>によれば、原告は事故当時二反三畝の田畑を耕作して農業を営んでいたことが認められる。
ロ、土木建築工事請負業について、
<証拠>によれば、原告は前記イの農業の傍ら被害車輛を所持して土木建築業者に同車持込みの土工ないし走り使いとして働いていた事実が認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は他の証拠と比較して信用することはできず他に、土木建築工事の請負業を営んでいた事実を認めるに足りる証拠はない。
ハ、不動産取引業について、
<証拠>を総合すると、原告は事故前に前記のとおり土工ないし走り使いをしていたので、土地や建物の売買の話を耳にすることが多かつたために、ときどき親切心から謝礼や報酬を取得する意思なく土地の売買等を世話していたこと、および、その結果ときどき謝礼を受けとつたことが認められる。しかし、職業として不動産取引業を営んでいたというためには、些少にしろ人的、物的設備をととのえ、営利の目的をもつて反覆継続して行なう意思があることが必要なのに、これを認めるに足る証拠がないから不動産取引業を営んでいたとはいいがたい。
また前掲証拠によれば原告は、昭和四三年ごろより不動産取引業を始める意思がありその収入があつたかのように主張するが事故当時人的、物的設備につき何らの準備等をしていなかつたこと、また、かつて宅地建物取引員の資格試験を受験したことがないのみでなく、受験科目すら知らなかつた事実が認められ、右事実を併せ考えれば原告が本件事故当時不動産取引業を営んでいたことを認め難く原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は他の証拠と対比し措信し難い。
ニ、食堂経営について、
<証拠>によれば、原告は妻千恵子と共同で昭和三七年から昭和四〇年の一二月末まで橘食堂という屋号の食堂を経営していたことが認められるが、昭和四一年一月以降事故当時も右食堂の営業をしていなかつた事実は当事者間に争いなく、将来右食堂経営の開始準備をしていた事実を認めるに足りる証拠がなく、単なる食堂経営の希望を有するのみでは、事故当時の職業として認めがたい。
(2) 収入
<証拠>を総合すると、原告は事故当時農業の傍ら被害車輛持込みの土工ないし走り使いとして一日三七〇〇円程度の収入をあげていたことが認められ、同車使用のための経費は一日七〇〇円を越えることはなかつたものと推認されるから、それを差引いた残額三〇〇〇円が一日の収入であつたことが認められる。前掲証拠によると、一ケ月間に少くとも二五日は働いたものと推認されるので、原告の一ケ月平均収入は七五、〇〇〇円であつたものと認められる。
(3) 休業損害
金一、八〇〇、〇〇〇円
原告は前記傷害のため、前記のとおりの期間治療を受けたことは前示認定のとおりであり、右事実および原告本人尋問の結果を総合すると原告は事故後昭和四五年一月ごろまで前記傷害のため全く就労することができなかつたものと認められる。したがつてその間に喪失した得べかりし利益の額は一、八〇〇、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨て)となる。
算式 七五、〇〇〇×二四=一、八〇〇、〇〇〇円
(4) 後遺症による逸失利益
金四〇五、〇〇〇円
<証拠>を総合すると、原告は大正一一年九月四日生で本件事故当時満四五才の普通健康体の男子であつたことが認められ、原告の前記後遺症によれば、右休業期間経過後三年間は労働能力の制限を受けることが推認され、労働能力喪失率は一五%と認めるのが相当である。
そこで原告の労働能力一部喪失による将来の逸失利益をホフマン式計算方法により年五分の中間利息を控除して昭和四五年五月九日(本訴請求における遅延損害金の起算日)における現価を計算すると、四〇五、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨て)となる。
算式 七五、〇〇〇×一二×〇、一五×三=四〇五、〇〇〇円
3、慰藉料
一、六〇〇、〇〇〇円
前示認定の原告の受傷の部位・程度治療の経過および後遺症の程度等諸般の事情を考慮すれば原告の本件事故による慰藉料は一、六〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。
(本井巽 斎藤光世 中辻孝夫)